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コラム記事
2023.03.14

2024年4月~有期雇用契約・無期転換制度に関する省令改正予定!現行の枠組みと施行予定の内容を社会保険労務士が解説!

はじめに

有期雇用労働者は企業にとって大きな戦力ですが、有期雇用労働者は雇止めの不安を常に抱えているうえ、処遇等も正規社員と比べて低い水準にあることが多いです。この有期雇用労働者の雇用の安定や処遇の改善を目的として2013年4月に改正労働契約法によって有期契約労働者の無期転換制度が施行されました。企業によって契約社員やアルバイト、パートタイマーと呼び方は様々ですが、契約期間に定めのある雇用形態の場合は、その名称にかかわらず有期契約労働者として、無期転換制度の対象となります。

無期転換制度の詳細は後述しますが、令和6年4月から労働契約法制と労働時間法制に関する省令が改正され無期転換制度と労働契約について新たな義務が課される見込みです。

改正まではあと1年程度時間はありますが、その前提となる現行の無期転換制度の枠組みと、改正で義務化予定の内容について社会保険労務士が解説します。

無期転換制度とは

無期転換制度とは、同一の企業との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、アルバイトなど)からの申込みにより、本人の労働契約が期間のある労働契約から期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。有期契約労働者が企業に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立します。使用者がこの申し込みを断ることは法律上認められていません。

例えば契約期間が1年の有期雇用契約の場合、5回目の更新後の1年間に無期転換申込権が発生します。ただし、契約期間が3年の場合は、1回目の更新後の3年間に無期転換申込権が発生し、申込がなされると1回目の更新後の契約期間満了後に無期労働契約が成立することになります。

無期転換後の労働条件

この無期転換制度について誤解されがちなのですが、有期契約労働者から無期転換の申込があった場合であっても企業は必ず正社員にする必要はありません。転換後の無期契約労働者の賃金・労働時間・職務・勤務地といった労働条件は就業規則や雇用契約に別段の定めがない限り、転換前の有期雇用契約と同一になります。

もし、転換後の労働条件を変える場合は、就業規則や雇用契約書に定めておく必要があります。

無期転換の利点

会社側、従業員側の無期転換のメリットとしては大きく次の通りです。

企業側のメリット:既に自社の実務や風土に精通した人材を無期雇用として獲得でき、長期的なスパンで社員を育成することができる。

従業員側のメリット:雇止めの不安なく安定的に働くことができ、従業員本人にとっても長期的なキャリア形成をすることが可能になる。

企業側も従業員側も、無期転換で大きなメリットを享受できると考えています。

無期転換の留意点

有期雇用から無期雇用に転換した場合のメリットがある反面、労使双方が気を付けるべきこともあります。

企業側の留意点:無期転換の申込がなされたら企業側は断ることができません。そのため、例えばコスト等の面から、有期雇用労働者の無期転換を望まないという場合は、そもそも労働者の有期雇用を無期転換権が発生しないように(つまり5年以内とするように)する旨予めコントロールしておく必要があります。(具体的には、対象者の有期契約の当初から、「有期契約は5年以内」と通知しておくことが重要です。就業規則にも記載することをお勧めします。)

従業員側の留意点:前述したとおり雇用条件は転換前と変わりませんので、無期雇用という雇用形態にはなるものの、正社員と同様の労働条件になるわけではありません。あくまでも雇用期間において「有期」から「無期」になるのみの変更であるという点をよく理解しておくことが重要です。

不要な労使トラブルの発生を防ぐため、各企業においては、予め正社員と無期転換社員との仕事の役割や責任の違いを明確にしておくとともに、雇用形態に応じた労働条件を就業規則等に定めておくことが求められます。もし、正社員と無期転換社員の仕事内容や責任の範囲などに差異がないにもかかわらず、処遇に差異があれば同一労働同一賃金の考え方に反し、社員間の不公平感にもつながるためよく検討しておく必要があります。

なお、企業側が労働者の無期転換申込権発生を避けるために、無期転換申込権が発生する5年超の直前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとされています。複数回の更新により労働者側には有期労働契約が更新されるものと期待する合理的な理由があるとして、企業側の雇止めを認めなかった判例もありますから、各社においては予めの準備や慎重な対応が必要です。

2024年4月の労働契約法制・労働時間法制の改正点と必要な対応

2013年4月の無期転換制度スタートから10年年近くが経過し、実際にこの制度を利用して有期から無期に転換された社員が発生してしばらく経つという現在のタイミングで、無期転換制度の適切な活用がなされるよう以下の改正が見込まれています。いずれも2024年4月の改正予定です。

・労働基準法第15条の「労働条件明示事項」に、通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加する。

・労働基準法第15条の「労働条件明示事項」に、無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加する。

・無期転換後の労働条件を明示する際には、書面交付により明示すべき事項については書面の交付等により明示することとする。

これにより、企業側では労働条件通知書の様式への追記や、従業員への説明が必要になります。また2013年4月の法改正時の対応と同様、改めて自社で働いている有期雇用社員の契約期間や更新回数、職務内容や労働条件などについて現状を把握しておくことが前提になります。

終わりに

引き続く深刻な人材不足の中で、有期契約労働者は各社にとって貴重な労働力とされてきました。その結果、有期雇用契約であっても更新を繰り返され、ひいては手続きが形骸化してしまい、結果的に無期雇用と変わらない実態があるとみなされ得るケースも発生しています。無期雇用者と変わらない実態で働いているにも関わらず、突然雇用を切られるといった不利益から有期労働者を守るために2013年4月に無期転換制度が設けられましたが、2024年4月の省令改正はこの無期転換制度を企業側・労働者側にさらに強く意識づけるためのものであると考えます。この機に再度無期転換制度が注目されることが予想されますので、各社様においてはお早めに自社の有期雇用労働者の状況の整備を進めて頂くことをお勧めします。

【執筆者プロフィール】

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