年末調整は毎年決まったスケジュールで進められる手続きであり、手続きをスムーズに行うためには事前準備が重要となります。この記事では、年末調整における具体的なスケジュールと、それぞれの段階で何をすべきかを詳しく解説します。
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目次
年末調整の全体スケジュールと人事労務担当者へのアドバイス
年末調整は、一般的に10月から翌年1月にかけて行われます。以下に全体の流れを示します。
10月~11月初旬:必要書類の準備・配布
会社は従業員に対して、年末調整に必要な書類を準備して配布します。
書類としては、
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- 「給与所得者の保険料控除申告書」
- 「給与所得者の配偶者控除等申告書」
- 「住宅借入金等特別控除申告書」
があります。
<人事労務担当者へのアドバイス>
従業員に対して書類の配布だけでなく、記入方法の説明や必要な添付書類(保険料の控除証明書など)の案内を行うと、スムーズな提出につながります。
11月中旬~12月初旬:書類の回収・確認
従業員は、配布された書類に必要事項を記載して会社に提出します。会社は提出された書類を回収し、記載内容の不備や不明点がないか確認します。
<人事労務担当者へのアドバイス>
従業員からの書類回収は、期限を設けて確実に行いましょう。また、この段階で、提出された書類に不備がないか確認することが重要です。たとえば、扶養家族の情報が正確に記載されているか、控除証明書が添付されているかをチェックします。書類に不備がある場合、速やかに従業員へ連絡し、再提出の依頼をしましょう。
12月中旬:年末調整の計算
会社は従業員から回収した書類を基に、各種控除額を計算して年末調整を行います。給与や賞与などの総額をもとに最終的な所得税額を確定し、源泉徴収された税額との差額を精算します。
<人事労務担当者へのアドバイス>
書類の確認が終わったら、年末調整の計算に入ります。給与の総額、賞与、各種控除額をもとに年間の所得税を再計算し、源泉徴収された税額との差額を精算します。不足している税額は追加徴収され、過剰に徴収されていた税金は還付されます。この時期には、賞与の支給タイミングも重なる場合が多いため、賞与を含めた調整を行うことが一般的です。
1月:法定調書の提出と源泉徴収票の発行
年末調整が完了したら、会社は税務署に対して「法定調書」を提出し、従業員には「源泉徴収票」を発行します。
<人事労務担当者へのアドバイス>
年末調整の結果をもとに、翌年1月末までに税務署に対して法定調書を提出します。同時に、従業員に源泉徴収票を発行し、必要に応じて確定申告を行うための準備を整えます。法定調書の提出には、マイナンバーの記載や電子申告を行う場合の手続きなど、特定の条件がありますので、事前に確認しておきましょう。
年末調整をスムーズに進めるためのポイント
年末調整のスケジュールを守り、手続きをスムーズに進めるためのポイントを以下にまとめます。
早めの準備と従業員への周知
書類の準備を早めに行い、従業員に対して提出期限や記入方法の説明を徹底することで、書類の提出遅延や不備を防ぎます。また、説明会を開催するなどして、従業員の理解を深めることも有効です。
不備のある書類の迅速な対応
提出された書類に不備があった場合、速やかに対応し、修正を依頼します。年末調整のスケジュールはタイトなため、書類はすぐにチェックして対応することが重要です。
賞与支給時の計算を含めた調整
12月の年末調整のタイミングでは、賞与支給と重なることが多いため、賞与を含めた年間の収入で最終的な調整を行います。賞与の支給額や時期を事前に確認し、調整の計算に反映させることが必要です。
年末調整が遅れるとどうなる?
年末調整が予定通りに進まない場合、さまざまな問題が生じる可能性があります。
法定調書の提出期限に間に合わない
年末調整が遅れると、翌年1月末までに法定調書を提出できず、税務署からの指導を受けることがあります。
従業員への源泉徴収票の発行が遅れる
源泉徴収票の発行が遅れると、従業員が確定申告を行う際に不便を被る可能性があります。特に、医療費控除や住宅ローン控除を確定申告で受ける必要がある場合には、発行遅れが悪影響を及ぼすことがあります。
年末調整後のフォローアップ
年末調整が完了した後も、いくつかのフォローアップが必要です。
還付金の確認
年末調整によって過剰に徴収されていた税金が還付される場合、従業員の給与に反映させます。還付金の受け取り時期も従業員に事前に伝えておきましょう。
確定申告が必要な従業員へのサポート
年末調整後も確定申告が必要な従業員(副業をしている人、医療費控除を受ける人など)に対しては、必要な手続きや書類について案内を行い、サポートしましょう。
年末調整のスケジュールに沿った準備を行うことで、手続きがスムーズに進み、従業員と会社双方にとっての負担を軽減することができます。次回の記事では、「年末調整書類の種類と記載時のポイント」について詳しく解説します。