「アルムナイ採用」ってご存じでしょうか？
アルムナイ採用とは、過去に自社で働いていた人を再度雇用する採用方式のことです。近年、人材不足の深刻化や多様な働き方の普及に伴い、「アルムナイ採用」の機会が増えています。かつては「一度退職した社員を再び雇うなんて…」と敬遠されがちでしたが、今では企業にとって戦略的かつ効率的な採用手法として注目されています。

本記事では、アルムナイ採用の概要と実施方法を初心者向けにわかりやすく解説します。「どうやって進めればいいの？」と疑問を持っているなら、ぜひ最後までお読みいただき、採用・人事施策の一つとして検討してみてください。

アルムナイ採用とは？

アルムナイ（Alumni） とは、本来「卒業生」「同窓生」を意味するラテン語で、ビジネスの文脈では「元社員」や「退職者」を指します。冒頭でもお話ししましたが、「アルムナイ採用」とは、過去に自社で働いていた人を再度採用することを指します。

なぜ注目されているのか

従来は「退職者が戻るなんて」というネガティブなイメージがあったかもしれませんが、昨今の「働き方の多様化」「人手不足」「キャリアの流動化」などを背景に、アルムナイ採用が合理的だという意見が広まってきています。

アルムナイ採用のメリットデメリット

メリット

企業文化や業務に対する理解が深い

• 元社員なので、社内のルールや文化を改めて学習する時間が少なくて済む。
• また、業務内容も熟知しているので、即戦力として早期にパフォーマンスを発揮しやすい。

社内の関係性を強化できる

• 元社員が戻ってくることで、他の従業員に「社風が良い」「成長環境がある」など、社内のポジティブな印象を与えることができる。

採用コストの削減

• 通常の中途採用に比べて、ヘッドハンティング会社や求人広告などのコストが最小限で済む。
• 面接・審査の手間も少なくなる場合が多い。

社外での経験を吸収できる

• 一度退職した社員は、他社での業務経験や新しいスキルを身につけている可能性が高いので、そのノウハウや人脈が企業の新しい力となり得る。

デメリット

周囲の社員からの嫉妬・不公平感

• 元社員が高待遇のポジションに配属された場合、「一度辞めたのに優遇されているのでは？」という疑問や不満が社内で生じる可能性がある。

会社を辞めやすくなる

• 退職してもまた簡単に戻って来れるという認識が増えてしまった場合、従業員の離職率が高くなる可能性がある。

現在の社内状況と合わない可能性がある

• 元社員が退職した時期よりも会社が成長し規模拡大などを行なっている場合、当時の役割では現在の会社で活躍できない可能性がある。

やる気のない社員を取ってしまう可能性がある

• 事前に本人の意欲を確認していないと、ただ戻ることを目的としたやる気のない社員を再雇用してしまう可能性がある。

アルムナイ採用の実施方法

アルムナイ採用を成功させるためには、採用計画と体制づくりが重要ですので、以下のポイントを抑えましょう。

アルムナイ用のデータベースを構築する

退職者の情報を整理・保管するデータベースを整えましょう。

集めるべき情報

• 連絡先（メールアドレス・電話番号など）
• 在籍時の所属部署・役職
• 退職理由や当時の評価
• 転職先企業・業種（わかる範囲で）

個人情報管理のルールに則って、データを最新に保つことが大切です。特に退職後は転居やメール変更が多いので、定期的にコンタクトし、アップデートの仕組みを設けましょう。

元社員とのコミュニケーション方法の確立する

アルムナイ採用を実施するためには、退職した社員と継続的にコンタクトし、繋がりを維持することが重要となります。

コミュニケーション方法例

• 定期的なアルムナイ用ニュースレターの配信
• 会社の新製品やイベント情報、社内制度のアップデートなどを発信
• SNSを活用した専用コミュニティの活用
• OB・OG会や同窓会イベント

元従業員へアルムナイ採用を告知する

求人を掲載する場合

アルムナイ採用求人を掲載した後、アルムナイ向け専用ページやメールマガジンで、「今こんなポジションを募集しています」という情報を提供しましょう。また、元従業員がスムーズに応募できるように専用の応募フォームも整備しましょう。

スカウトする場合

重要なポジションが空いた際、過去に在籍していた従業員の中から候補者を探し、直接アプローチしましょう。「今のキャリアを活かせるポジションがあるので、話を聞きませんか？」と声をかけるのも手です。

面接・選考プロセスに気をつける

面接を省略しすぎない

既に相互理解があるからといって面接を省略しすぎないようにしましょう。
アルムナイ採用だからこそ、「当時と今とでどんな成長や変化があったか」を確認することが大切です。中途採用のように、応募者が自社で活躍できるかどうかを公平に判断するようにしましょう。

入社後のミスマッチ防止を防ぐ

当時と比べ会社側も変化しているし、アルムナイ側も転職先で培ったやり方や価値観があります。そのため、現状の職務内容や組織体制を正直に伝え、それを候補者が納得したうえで再入社するようにしましょう。

再入社後のフォローアップ

オンボーディング

いくら元社員だからと行っても、組織変更やシステム変更があれば、その変化に戸惑う可能性があります。事前にオンボーディングプログラムを整備し対応しましょう。

周囲との関係づくりに気をつける

上司や同僚は以前と違うメンバーかもしれないので、コミュニケーション機会を積極的に設け、チームへの馴染みをサポートしましょう。

よくあるトラブルと対策

給与や待遇面での不満

以前いた時とは給与が待遇面が変化している場合があり、それによって戻ってきた従業員が不満を抱える可能性があります。入社する前にすり合わせを行なっておきましょう。

過去と現在の社内風土の違い

社内が大きく変わっているのに、元従業員が「昔のやり方」を主張し過ぎて、社内に摩擦を生むケースがあります。今の環境に馴染めるように、入社後もフォローアップしましょう。

アルムナイ採用に成功している企業例

大手IT企業A社の場合

社内にOB・OGが集まる専用SNSを設置し、定期的にニュースレターを配信。重要なプロジェクトが立ち上がるタイミングで特定スキルを持つ元従業員に声をかけるという方法で、数名の元社員が再入社。即戦力として成果を出している。

製造業B社の場合

昔ながらの社風だったが、人事がイノベーションを図るため「アルムナイ再雇用支援室」を設立。退職時に面談で「将来戻る可能性」や「どんなスキルを身につけたいか」をヒアリングし、前向きに送り出す文化を作った。結果、辞めた社員のうち約10%が数年後に戻ってきて新事業を牽引。

まとめ

アルムナイ採用は、人材不足が深刻化する中で注目される効率的な採用手法です。一度退職した社員を再度迎え入れることで、企業文化の理解が深く、即戦力になりうる人材を獲得できます。また、社外での経験やノウハウを取り込むことで、新しい風を社内に吹き込み、組織力を向上させる可能性も高いと言えます。

ただし、社内メンバーへの説明や、退職理由の解消などの注意も必要です。適切な人選と、公平かつ透明性のある処遇設計があれば、アルムナイ採用は企業にとって大きな戦力補強となりうるでしょう。

この機会に、自社のOB・OGとつながる仕組みを整え、いつでも戻ってきやすい「開かれた企業文化」を実現しませんか？ 人事担当者はぜひ前向きに検討してみてください。

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