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コラム記事
2023.03.07

2022年4月から努力義務化!企業におけるカスタマーハラスメント対策について社会保険労務士が解説!

はじめに

2021年に都内のお弁当屋さんで、顧客が店員に暴言を吐いたり小銭を投げつけたりする様子がテレビやSNSなどでも報道され話題となりました。厚生労働省が実施した「2020年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に顧客等から著しい迷惑行為の相談があった企業の割合は19.5%、また同調査の労働者に対する調査では、過去3年間に勤務先で顧客等から著しい迷惑行為を一度以上経験したと回答した割合は15.0%となり、カスタマーハラスメントに悩む企業や労働者は年々増え続けています。

2022年4月1日から職場でのパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置が義務付けられたいわゆるパワハラ防止法ですが、この改正を踏まえ、カスタマーハラスメント(略称:カスハラ)すなわち顧客からの著しい迷惑行為に対しても、会社は相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取り組み、被害を防止するための取り組みを行うことが努力義務となりました。

今回はカスタマーハラスメントが及ぼす企業への影響や企業が行うべき対策について、社会保険労務士が解説します。

カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメントとは、「顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして当該要求を実現するための手段、態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。つまり、顧客や取引先などからのクレームすべてを指すわけではないということが言えます。クレームの中には商品やサービス等への改善を求める正当なものも含まれており、その中でも過剰な要求や不当な言いがかりをつける悪質なクレームに対して、企業は従業員を守る対応が求められるということです。

近年では、コロナ禍でのマスク着用や消毒等に関する強い要望でのトラブル事案も多くなっています。

カスタマーハラスメントの判断基準

殴る蹴るといった犯罪に該当するものを除いて、カスタマーハラスメントへの対応方法は企業ごとに違いがあります。一定のレベルを超えたら悪質なものとして毅然と対応する会社もあれば、顧客第一主義の中で「お客様が納得いくまで対応する」とする会社もあります。企業文化や業種によって判断基準に違いが出てくるため、まずは厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」でも紹介されている以下の尺度を参考に、自社でのカスタマーハラスメントの判断基準を明確にしたうえで、企業内の考え方、対応方針を統一し、現場と共有することが大切と考えられます。

顧客等の要求内容に妥当性があるか

まずは事実関係、因果関係を確認し自社に過失がないか、根拠のある要求かを確認し、主張が妥当であるかどうか判断します。

要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

顧客等の要求が社会通念に照らして相当であるかを確認します。例えばコールセンターでの長時間に及ぶクレームは業務の遂行に支障が生じるという点で相当性を欠く場合が多いと考えられます。また顧客等の要求内容に妥当性があってもその言動が暴力的・威圧的・継続的・拘束的・差別的・性的である場合はカスタマーハラスメントに該当すると考えられます。

企業は安全配慮義務違反として使用者責任を問われることも

カスタマーハラスメントが原因で精神疾患を発症することや、休職や退職に追い込まれることは従業員にとっても企業にとっても大きな損失です。カスタマーハラスメントが原因で精神疾患となった場合、事案によっては労災と認定されることもあり、さらにこのような状況下で企業がカスタマーハラスメント対策をせずに、従業員へのケアもしていない場合は、安全配慮義務違反として使用者責任を問われる可能性もあります。また、自社の社員が加害者となった場合も企業の信用の失墜につながり、ブランドイメージの低下による顧客離れなど大きな影響があるものと考えます。

企業が取り組むべきカスタマーハラスメント対策とは

厚生労働省が告示する「職場におけるハラスメント関係指針」におけるカスタマーハラスメントの記載については、雇用管理上の配慮として次のような取組を行うことを努力義務としています。

相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備

具体的には組織のトップがカスタマーハラスメント対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示すことなどがあげられます。例えば、就業規則に「各種ハラスメントの禁止」という条文を設け、いかなるハラスメントも許さないという姿勢を見せることも肝要と考えます。

被害者への配慮のための取組

具体的には、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組が必要とされています。すでに社内でハラスメント窓口がある場合は、カスタマーハラスメントを受けた従業員も気軽に相談できるように相談対応者を決めておき、広く周知するなどの対応が必要と考えられます。

他の事業主が雇用する労働者等からのパワハラや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組

社内でカスタマーハラスメント行為へ対応体制、方法をあらかじめ決めて置き、対応マニュアルを作成する、従業員教育・研修を行うことも考えられます。

おわりに

カスタマーハラスメントを見過ごすことは企業にとって非常に労務リスクが高いものです。自社の社員の心身を守るためにも、不要な時間的・経済的コストの流出を防ぐためにも、今後の法制化を見据えて早めに対応を実施していくことが肝要と考えています。

一方で企業がカスタマーハラスメントの取組を積極的に進めたとしても、顧客側のハラスメントに対する理解や認識が深まらなければその予防の効果にも限界があると考えられます。企業によっては「ハラスメントは絶対に許しません」という旨の案内をあえて顧客側から見える場所に掲示したり、鉄道会社でも「駅員への暴力は犯罪です」というポスターを掲示するなど啓発する取り組みを行っておりますが、これらはとても有意義なものと考えます。

顧客側の意見は商品やサービスの改善につながることもあり、意見自体を抑制することのないよう留意は必要であるものの、行き過ぎた顧客上位意識によって自社の労働者が被害を受けるような状況は即刻変えていく必要があるものと考えます。カスタマーハラスメント防止への取り組みにより、各社における働きやすい職場づくりが加速していくことを願っています。

【執筆者プロフィール】

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